明治期の鞄関係の特許
明治期に出願された鞄関係の特許をリストにしてみました。各タイトルをクリックすると、その特許の明細書をPDFで表示します。
日本の特許制度は1885年(明治18年)に始まっており、鞄関係で最初の特許は1887年(明治20年)に取得されています。
その後、「鞄」という言葉で特許申請されたものは1894年(明治27年)まで待つことになります。
その「鞄」も多くは鞄というよりは、移動式のタンスとか木箱といったほうがよいものが多い感じです。
革匣金具 特明00583 1887年(明治20年)/10/05出願
トランクの錠前に関する発明ですが、「鞄」とも「トランク」とも表記せず革匣(かわばこ)という表現になっています。
発明者 広島県広島区平田屋町62番屋敷 中川文五郎 とあります。平田屋町は、現広島市中区本通にあたり、明治20年代当時から商店街を形成していました。
皮櫃 特明01092 1890年(明治23年)/9/24出願
出願は明治23年なので、時代的にトランクや鞄といった名称でも良かったはずですが、皮櫃という名称を使っています。 発明者 大阪府南区安堂寺橋通一丁目五番屋敷 小池宗三郎 とあります。
蝦蟆口金具 特明01757 1892年(明治25年)/8/1出願
発明者 東京府芝区松本町四十四番地 松本守實 とあります。現在の港区芝三丁目、芝公園の南隣のあたりになります。
革盤 特明01948 1892年(明治25年)/6/3出願
発明自体はカートリッジバッグのような鞄の背面に金属の板が取付けられており、それがスライド金具によって開いたり閉じたりするという仕組みのもののようです。
この明細書では、「革盤」というj言葉が使われています。
明治25年は東京ではすでに「鞄」という文字があふれ出している時期なので、割と珍しい記載のようにも思います。しかしながらあきらかに「かばん」と読む特許申請という事ではこれが最初のように思われます。
文中にも本発明は其計上は略々世上に行はるゝ折中革盤と称するものと同一という記載があり、かばん(革盤)という表記・表現が一般的である旨を裏付けています。
発明者 秋田県平鹿郡横手町六番地本籍
東京市麹町区有楽町一丁目五番地寄留
高垣 尚志 とあります。
なお、この人物と同一かどうかはわかりませんが、国立公文書館デジタルアーカイブ明治7年6月25日に「国勢時務建白〔明政教正賞罸之議〕(秋田県貫属 士族高垣尚志)」がヒットします。この末尾に二十歳と書いてあるので、そこから20年ほど経ったこの発明の出願の頃は40歳代だと思われ、同一人物の可能性もあります。
貫属とは、本籍という意味があるので、秋田県に本籍がある士族の高垣尚志という意味です。
鞄 特明02379 1894年(明治27年)/9/03出願
発明者 東京市日本橋区橘町四丁目八番地 住吉庄次郎 とあります。
住吉庄次郎は、日本全国商工人名録 (明治25年版)にも鞄靴問屋 住吉屋 住吉庄次郎として登場する人物です。明治25年時点で人名録に鞄商として載っているぐらいですから、発明品の申請も「鞄」となっていてしかるべきです。
https://japanbag.com/history/1892jinmeiroku_konishi を参照してください。
腰差 特明02402 1894年(明治27年)/6/17出願
発明者 京都市上京区御池麩屋町東入中白山町二十四番戸 初田忠次郎 とあります。
中白山町は市営地下鉄京都市役所前で俵屋旅館や柊屋などがあるあたりです。
この発明は、バックルとカナビラを組み合わせたようなつくりの金具をガマ口に取り付けて、がま口が帯から落ちないようにしたもののようです。
鞄 特明02469 1894年(明治27年)/6/11出願
発明者 東京市日本橋区馬喰町三丁目二番地 和田文七 とあります。
この発明はトランクの容積を増減する金具に関する発明です。
鞄 特明02857 1895年(明治28年)/8/16出願
この鞄も、現代の感覚ではキャビネットとか木箱と言った方がよいもので、文中にも柳行李とか櫃といった表現が出てきます。内容量の増減に対し、二重構造になった箱で容量を増減する機構として発明が提出されています。
発明者 千葉県東葛飾郡行徳町下妙典百七十七番地 志村傳吉 とその相続人志村貞吉とあります。
鞄 特明03915 18??年(明治??年)/??/??出願
これも他と同様、現代の感覚ではキャビネットとか木箱と言った方がよいものです。
このころの出願には、発明者の住所や出願時期・特許登録時期などが見当たりません。発明者 尾田市松、尾田定七という名前だけが確認できます。
特明03610あたりまでは、出願時期・特許登録時期が確認でき、明治32年6月の登録となっているので、この発明は明治32~3年頃となります。
網鞄 特明04012 18??年(明治??年)/??/??出願
これはちょっと変わり種で、網でできた信玄袋といったかんじです。
この出願にも、発明者の住所や出願時期・特許登録時期などが見当たりません。発明者 山崎禮三という名前だけが確認できます。
特明04400以降は、出願時期・特許登録時期が確認でき、明治33年11月の登録となっているので、この発明は明治32~3年頃となります。
袋物用止金具 特明04588 1900年(明治33年)/9/19出願
これは、がま口金具のガマの止め方に工夫を凝らしたものです。
このころの出願には、発明者の住所が見当たりません。発明者 中島三吉という名前だけが確認できます。
鞄(見臺) 特明05316 1902年(明治35年)/9/19出願
これは、折鞄(といってもクラッチバッグに近いもののようです)に工夫をして、書物を立てる見台代わりになるという機構がある鞄です。
このころの出願には、発明者の住所が見当たりません。発明者 岡田竹次郎という名前だけが確認できます。
自在袋) 特明05484 1902年(明治35年)/4/07出願
このころの出願には、発明者の住所が見当たりません。発明者 岸嘉一 山縣正雄という名前だけが確認できます。
皮櫃 特明06022 1902年(明治35年)/1/30出願
トランクの上面を引っ張り出して机にしたり、すこし斜めにして見台代わりにできたりするものです。
このころの出願には、発明者の住所が見当たりません。発明者 高橋甲太郎という名前だけが確認できます。
鞄 特明06033 1902年(明治35年)/9/22出願
カートリッジバッグのカブセの縁に沿うように金具が取り付けられており、それが錠前部分で止まっている。錠前部分の留め具を外すと、この金具が手提げのようになる。
このころの出願には、発明者の住所が見当たりません。発明者 熊谷卯八という名前だけが確認できます。
軽便学器畳鞄 特明06033 1902年(明治35年)/9/22出願
これはもう、カバンというより自在家具と言った方がいいでしょう。普段はカラーボックスのような形状で本を収納し、これに手提げのハンドルを取り付け、さらにこれが机にもなるというものです。明治30年代においても、こういうものが「鞄」と呼ばれていたという理解にはなります。
このころの出願には、発明者の住所が見当たりません。発明者 熊谷卯八という名前だけが確認できます。
机鞄 特明06890 1902年(明治35年)/9/22出願
これも、机を変形して鞄(キャビネット)にできるというものです。
このころの出願には、発明者の住所が見当たりません。発明者 小川政太郎という名前だけが確認できます。
手提鞄 特明07659 1904年(明治37年)/5/11出願
これも、机を変形して鞄(キャビネット)にできるというものです。
このころの出願には、発明者の住所が見当たりません。発明者 山田千太郎という名前だけが確認できます。
止金具 特明07954 1904年(明治37年)/7/21出願
金属の持ち手に関する発明。持ち手の付け根に工夫があって簡単にロックできて開かないようにするというもの。
このころの出願には、発明者の住所が見当たりません。発明者 久徳芳太郎という名前だけが確認できます。
- 公開日 2021-05-20
- 最終更新日 2021-05-20
- 投稿者 太田垣