国立国会図書館の近代デジタルライブラリに1892年(明治25年)出版の日本全国商工人名録 (明治25年版)という資料があります。
これは企業人の人名録のようなものなのですが、800ページもある大著です。
とても一度に全部を確認することはできませんが、335コマ目の摂津国河辺郡伊丹 小西製革場の欄に以下のように書いてあります。
帯革堤及肩掛鞄
其外革細工種々
小西製革場
摂津國川邉郡伊丹町
「帯革堤及肩掛鞄」とあるので、ベルト、手提および肩掛け鞄ということでしょう。明治25年には、鞄という漢字がすでにこういう場所にも使われていたという一例でもあります。
この隣の欄には、同じ資本と思われる小西ランプの文字もあります。伊丹で小西といえば思い当たることがあるので、調べてみると、やっぱり清酒白雪などで有名な小西酒造だった。伊丹の清酒の歴史が書かれた下記ページによると、清酒の販売で得た富を、近代化産業に投資し、その一つとして皮革工場も作ったとのこと。少し引用すると、「 明治18年(1885年)11代目新右衛門業茂は全国3番目のランプ口金工場小西興業場を設立、ついで翌19年には皮革工場を設立、21年山陽電鉄(現JR山陽本線)総代就任… 」と書かれています。
http://itamisake-kma.jp/konishi.html
東京の製靴商のところでは、以下の様な記述がみられる。他にも鞄という文字が使われていそうなので、もう少し調べてみたいところです。
靴の製造で有名な桜組が鞄や馬具も製造していたようです。築地で製造し、銀座に運んで販売していたのでしょうか。
各種靴、鞄、馬具
護謨塗類革具製造
京橋區築地
1−1
桜組組長 依田柴浦各種靴、馬具
鞄、護謨塗類類 革具商
仝銀座
3−16
桜組 出張店
126コマ目
東京府工芸品共進会賞牌拝受
仏国巴里府万国大博覧会賞牌拝受
第三回内国勧業博覧会賞牌拝受
靴鞄製造販売東京市神田区連雀町18番地
村上勇雄
ちなみに、武蔵國南足立郡千住町(196コマ目)と武蔵國北豊島郡南千住町(198コマ目)には、鞄・革関係は見当たりませんでした。
東京の目次欄(16コマ目)には以下の様にリストされていました。
○元結問屋○袋物問屋 四十一
○袋物商 四十二
○革煙草入莨入地紙製造商○袋物附属金具問屋○
○革鞄商 四十三
○舶来小間物問屋
○舶来小間物商
○學校用品小間物商○釦甲馳商○帽子製造○
洋傘問屋
○洋傘商
○製靴商○革問屋
○皮革商○太皷商○馬具製造商
○時計商
並びですが、呉服問屋からはじまり、洋服屋などいろいろあって、小間物商、元結問屋、袋物問屋、袋物商、革煙草入莨入地紙製造商、袋物附属金具問屋、革鞄商、舶来小間物問屋、舶来小間物商と続き、更にすこし飛んで、靴鞄製造販売、革問屋が出てきます。
袋物問屋 17件
袋物商 25件
袋物附属金具問屋 2件
革鞄商 12件
この中で鞄という言葉が載っているところをピックアップしてみると
■袋物問屋 17件
■袋物商
袋物手提鞄商兼美術品製造 京橋区銀座1-9 武田屋 伊藤熊五郎
袋物鞄商 神田区小川町1 奥居安平
123コマ
■革鞄商
革鞄提物問屋 日本橋区横山町1-15 炭屋 杉谷豊七
和洋製革鞄問屋 日本橋区通3-9 大阪屋 川上藤兵衛
鞄靴問屋 日本橋区橘町4-4 木屋 坂井定治郎
袋物鞄類和洋小間物問屋 日本橋区通○町8 近江屋 木津常吉
鞄靴問屋丼舶来雑貨商 京橋区南伝馬町1-16鞆絵屋 相場真吉
鞄革具問屋 京橋区南伝馬町20 早川八五郎
鞄靴問屋 日本橋区橘町4-8 住吉屋 住吉庄次郎
鞄問屋 日本橋区横山町2-17 青山孝次郎
陸海軍用革具問屋兼旅行用手提鞄類 京橋区銀座2-6 薄井福次郎
手提鞄護謨靴問屋 京橋区南伝馬町2-14 紀伊国屋宮元善之助
鞄袋物問屋 日本橋区通油町14 信濃屋 杉浦茂兵衛
鞄袋物問屋 日本橋区横山町1-8 伊勢屋 髭野鐵次郎
123〜124コマ
■その他
靴鞄製造販売 神田区連雀町18 村上勇雄
馬具靴鞄諸革具製造販売 京橋区銀座2-6 林商店 主任長井策太郎
と、こんな感じです。
- 公開日 2013/05/12
- 最終更新日 2013/05/12
- 投稿者 太田垣