1888年(明治21年)「工学会誌」の大坂製革所

1888年(明治21年)「工学会誌」に大坂製革所についての記載があり、その中に主要な生産物について記載されています。

   ○雑記

○大坂製革所

過般京坂地方を巡廻せし本会会員の物語りに大坂府難波村に在る 製革所は是迄大倉組の所有なりしが都合に依り近頃内外用達 会社の所有に属したるものにして所内には製皮所と革細工所あり

革細工所にては仝所の製造に係る革を以て陸軍士卒の礼帽 背嚢馬具並にカバン等を製す

製革所にては初め生(なま)の皮を水に浸し置き之を取り出して 烟艸切り包丁の如きものにて其のニベを削り去り 直径凡そ四五尺高さ一間計りの桶に樫の皮或はムクロジの粉末 其多量に水に浸したるものを盛り其内へ雄牛の皮なれは凡そ 五六ヶ月又子牛の皮なれは凡そ一か月漬け置きたる后ち取り上け 之を空気中に掛け乾燥す

其乾きたるを待ち上記仕掛の機械にて 引き延べブラシにて表面を磨く其際一種の液を塗布す

之を問ふに仝所雇外国人の調合する薬なりと答ふ 又之を乾燥し玻璃製の厚き板を以て其の表面を刮磨して光沢を 附するなり

現今同所には日々七十余名の職工を使用し居りて一か月に 牛皮二三千枚と象皮二三千磅を製出すと云ふ

職工の賃金は日給にて十五銭より七十五銭迄なるが仝所製革の 代価は左の如し

玻璃=はり。ガラス 磅=ポンド ※烟艸=えんそう:タバコのこと ※ニベ=膠(にかわ)のこと。おそらくゼラチン質の部分を削ることを言っている

皮革の種類 単位 価格 用途
茶象皮 百磅に付 金四拾三円 総て馬具用
黒象皮 金四拾一円 馬具胴乱サンチョロー将校背嚢用
[チャリ皮]表用[シボ]有 一坪に付 金十八銭 馬具カバン並に総て紐革用
仝 表用[シボ]無 仝上 仝上
仝 表染[シボ]無 仝上 仝上
仝 裏染甲皮用 仝上 総て靴の甲に用ゆ
子牛 表用[シボ]有 金十五銭 カバン並に総ての小細工用
仝 仝[シボ]無し 仝上 仝上
仝 表染[シボ]無 仝上 仝上
仝 裏染油皮 仝上 ゴム靴用通称油皮と云ふ
和製底象皮 百磅に付 金三拾二円 靴の底革調へ革及ひ剣鞘用
自生地皮 一枚に付 自二十銭至三十銭 小筒並に背嚢縁り煙草入用
肉色皮櫻皮と云ふ 自四十銭至六十銭 背嚢縁草及靴の裏に用ゆ
印度皮 百磅に付 自十六円五十銭至廿六円廿五銭 靴底用

↑読みやすいように少し加工してあります。

工学会誌 第77巻 P453

工学会誌 第77巻 P454


  • 公開日 2024-07-06
  • 最終更新日 2024-07-06
  • 投稿者 太田垣