1887年(明治20年) Albert Bartels 会話独案内
この本はちょっと面白い本で、原著はAlbert Bartelsという人が著した、英語とドイツ語やフランス語が対訳になっている英独会話・英仏会話の本でした。 ニーズが高かったのか、原本が手に入りやすかったのか理由は不明ですが、この本が日本で1886年に出版されると、1887年なって対訳部分を日本語に変えて出版していた本が、同時期に複数の人が翻訳しています。
The modern linguist, or, Conversations in English & German : followed by models of receipts, bills of exchange, letters, notes, tables of English, French and German coins, and of English, French and German weights and measures
The modern linguist, or, Conversations in English & French
by Albert Bartels
出典:[英文会話独案内(45コマ)]https://dl.ndl.go.jp/pid/871325/1/45
それぞれについて見ていきます。
1886年(明治19年) バーテルス氏 英文会話独案内(稲垣千代橘訳)
時期的に一番出版が早かったのが、稲垣千代橘訳の「バーテルス氏 英文会話独案内」。 1884年(明17)12月5日版権免許、 1886年(明19)1月15日出版発行 となっています。発行は東京柴井町。 表紙によると、外務省書記官の島田胤則が校訂したとあります。調べてみると、島田胤則は榎本武揚の後を受けて、在清国公使館の臨時代理行使に着任していたりする。
These(其等ノ) trunks(カバント) and(而シテ) this(此ノ) portmanteau(衣筐).
其ノカバント此ノ衣筐(キモノイレ)デゴザイマス
1887年(明治20年) 正則英和対訳バアーテル氏会話独案内(山本栄次郎訳)
山本栄次郎訳の「正則英和対訳バアーテル氏会話独案内」は、 1887年(明20)7月15日版権免許、 1887年(明20)10月 出版発行 となっている。版権取得から出版までものすごく早い。 発行は大阪心斎橋。
The luggage 旅荷物
The portmanteau 革○
The carpet-bag 毛○○
The trunk 革箱
The passport 往来ノ切手
このページの訳語は潰れていて読みづらいが、下記の記載と異なり、portmanteauは衣筐ではなく革嚢というように読める。
These(此等ノ) trunks(革嚢) and(及ビ) this(此) portmanteau(衣筐). ○此等のカバンと此衣筐
1888年(明治21年) バーテルス氏 会話独案内(栗田克三郎 訳)
栗田克三郎訳の会話独案内は、 1887年(明20) 5月19日版権免許 前編、 1887年(明20)10月14日版権免許 後編、 1887年(明20)12月21日合本御届、 1888年(明21) 1月出版、 発行は京都・下京区 大文字町。
ここでは、トランクの事を「カバン」と言わず、「皮櫃」と書いて「カワヒツ」とフリガナを振っている。
The luggage 荷物
The portmanteau 革袋(カワノフクロ)
The carpet-bag 衣類袋(キモノイレ)
The Trunk 皮櫃(カワヒツ)
この中では、trunkの訳に「カバン」を使わず、「皮櫃」と言っている。後ろの方でもう一度trunkが出てくるが、こちらでは「皮櫃」と書いて「カバン」とフリガナを振っている。
These trunks and this portmanteau.
ソノ革櫃(カバン)トコノ衣箱(キモノイレ)デゴザイマス
1888年(明治21年) 会話独案内(雨宮金護 訳)
雨宮金護訳の「会話独学」は、版権取得は一番早いが、出版は一番遅い。 1887年(明20)4月13日版権免許、 1888年(明21)4月25日印刷、 1888年(明21)5月12日出版、 発行は東京日本橋。
The luggage 旅荷物(タビニモツ) The portmanteau 革嚢(カワブクロ) The carpet-bag 毛織嚢 The trunk 革箱(カワバコ)
These trunks and this portmanteau. 其ノカバント衣筐デ御座イマス
- 公開日 2024-8-23
- 最終更新日 2024-8-23
- 投稿者 太田垣