1881年(明治14年)博物館列品目録の胴乱・カバン

明治14年に内務省博物局が編纂した博物館目録から、鞄関係の記述を探してみました。 ランドセルや提籃は竹や木の工芸品の部類として見つかりますが、カバンや胴乱といった単語は見当たりませんでした。 革製品の部類では、イギリスから持ち込んだ品として少し見える程度であり、あとはドイツやオーストリアから蒐集したモノも「カゴ」や「箱」が多く、カバンのようなものは見当たりませんでした。

まず、「第九區 竹木ノ指物、編製寄木ノ品類」の中に提籃や提籠が出てきます。

藤製胴乱  近江國甲賀郡水口製  壹個
出典:『博物館列品目録 工芸の部(94コマ)

柳行李       因幡国智頭郡用ヶ瀬駅製  壹個
柳條製ラントセル 仝  壹個
(中略)
提籠        仝 柳製  壹個   ※←仝は摂津國有馬製
(中略)
提籃       仝 清水町下ノ町  早川藤次郎製
出典:『博物館列品目録 工芸の部(94コマ)

用ヶ瀬は「もちがせ」と読む。

竹ノ手提 陸中国盛岡製 壹個 出典:『博物館列品目録 工芸の部(96コマ)

これは、バスケットのようなモノでしょうか。

ちなみに、靴や皮革は『博物館列品目録 工芸の部 二』 「第十四區 鳥獣毛ヨリ得ル織物、編栽ノ諸品、及ヒ毛装ニ用る獣皮、 粧飾用羽毛其他の品類」で扱われている。

このなかで、カバンに近いものとしては、以下の二つしかない。

革包手箱 仝       佐野常民献品  壹個
手提    仝 婦人用 田中芳男献品  壹個

ここで「仝」とは、「英国製」のことを指している。
佐野常民(さの つねたみ)は、日本赤十字社の創始者で、元老院議長や農商務大臣などを歴任した政治家。
田中芳男は、博物学者で「博物館の父」と呼ばれる。

目を見張るのは24区という区分で、分類できないものをまとめて列挙している。

堤籠 仝 サクセン、ケヲルグ、アドレル、ホーホルヲ   紙製造物 仝
提匣 仝 菓子入レ 仝
小匣 仝 鶏卵形  仝
提籠 仝 裂口付  仝
出典:「博物館列品目録 工芸の部 二 (36コマ)

ここで冒頭の「仝」は獨國(ドイツ)を、末尾の「仝」は、「獨國ライプヂック博物館寄贈品」を指しています。 そしてこの次のページにも、丸匣、小匣、提籠、提匣などがざっと並んでいます。いずれも獨國サクセン、ケヲルグ、アドレル、ホーホルヲ獨國ライプヂック博物館寄贈品ですが、紙製品だとすると、バッグではなさそうです。

46コマには、澳國タラー氏寄贈品として、澳国製の手下ヶ匣というものも見えますが、素材もわからずカバンかどうかはわかりません。


  • 公開日 2024-08-03
  • 最終更新日 2024-08-03
  • 投稿者 太田垣