1885年(明治18年)11月25日 阿波国海岸測量時の盗難金、棄捐払の件

著者:海軍卿伯爵川村純義//海軍卿//海軍中尉荒井久要

これはちょっと面白い窃盗被害の話。 公務員が測量のため徳島県に出張し、近くのお寺にお金の入ったカバンを預けていたら、そこの住職代理なる人物がカバンからお金を持ち出し盗んで逃げてしまいすぐに捕まったという話です。そして、その後の処理として、使ってしまったお金はいずれ弁済してもらうにしても、当面は払う当てがないので、国家予算の損金として扱うようにしたいが良いか、という事務手続きに関する伺いを立てています。

明治十八年十一月二十五日
主務 水路局長 主任
    会計局長 主査
    總務局長 審査
卿輔
本月二日普第二七五八号御決裁ニ
係ル盗難金棄捐払之義大蔵省
ヲ経テ御上請相成候処別紙朱書
之通リ御指令相成候ニ付供高覧
候也
普第二七五八号ノ二
盗難金棄捐払ノ義ニ付上申
本年五月徳島県下阿波国海岸測量ノ為メ当省水路局士官出
張為致同治岸橘浦光明寺止宿中海軍中尉大木延建ヨリ官
金六百四拾五円四拾八銭八厘「カバン」ニ入ン封印ノ上同寺住職
代理門田忠栄ヘ相托シ近シ近海出測中右住職代理該「カバン
ヲ破封シ金員取リ出シ遁走致候義発覚候ニ付警察署
ヘ申入夫々探偵相成間モナク縛ニ就キ巳ニ徳島軽
罪裁判所ニ於テ処刑相済シ右金額ノ内現在スル三百三
拾円四拾三銭一厘ハ還付候得共残リ三百拾五円〇五
銭七厘ハ被告忠栄ヨリ賠償スベキ旨言渡相成候得共
償却不致因テ該執行方徳島始審裁判所ニ対シ請求候
処別紙申渡ノ通リ本人ニ属スル財産ハ更ニ無之ニ付本
人並ニ其相続人ニ至ル迄身代持チ直シ次第辯償可為致
候ヨリ外ニ■リ立ツベキ道更ニ無之候ニ付テハ右残ノ金三
百拾五圓〇五銭七厘ハ當省十七年度経費の棄損ニ相立
度尤モ本人身代持チ直シ候上還納候即ハ其相當年度ノ
雑収入ニ組入レ収納可致候條至急御免許相成度此段
上申候也
明治十八年十一月二日 海軍卿伯爵川村純義
太政大臣公爵三條實美殿


  • 公開日 2023-01-10
  • 最終更新日 2023-01-20
  • 投稿者 太田垣