09 カバン=夾板起源説について

鞄という漢字の由来とは別に、カバンという言葉の起源として、広辞苑等にあるように、中国語の「夾板」「挟板」から来たという説がある。
この説で説明しやすいところは、「夾板」の発音が広東語で「カッパーン」と発音するところから、カバンという言葉の発祥を説明しやすいところである。明治初期の博覧会の記録など古い資料ではカパンと書かれている場合もあるところから「カッパーン」が由来になっている可能性はないとは言えない。

逆に、この説の怪しいところは、何故そのまま夾板という単語が日本に輸入されなかったのかということと、現代の中国語では夾板は鞄の意味では使わず、文字通り何かをサンドイッチのように板ではさむモノの事を言うということ。さらに、西欧文化が次々と入ってくる中で、なぜオランダ語や英語ではなく、中国語なのかということなど。

想像を豊かにするならば、学者や軍人の間での言葉の伝搬ではなく、中国人のブルーカラーと日本人労働者が一緒になるようなシチュエーション(たとえば港湾の荷捌き場等はどうだろうか)で発音だけが伝わったということも考えられそうだ。

実際、横浜においては洋館等の建築技術や印刷、洋服に関する縫製に至るまで、西洋人の文化の周辺には必ず華僑が存在していたようだ。