04 「鞄」は国訓字

漢字としての鞄がどのようになっているのか、まずは手始めに諸橋轍次博士著『大漢和辭典』をひいてみる。


【鞄】

[一]ハク     〔集韻〕匹角切 p’ao2
[二]ホク・ボク  〔集韻〕蒲沃切
[三]ハウ・ベウ  〔集韻〕蒲交切
[四]ハウ・ベウ  〔集韻〕部功切
[五]ハウ・ベウ  〔集韻〕皮教切 pao1

[一][二][三][四] (1)かはつくり。なめしがはの工人。通じて鮑(12-46074)につくる。〔説文〕鞄、柔革工也、从革包聲、讀若朴、周禮曰、柔皮之工鮑氏、鮑即革也。〔周禮考工記、總目、攻皮之工、函鮑▲韋裘、注〕鮑、書或爲鞄。(2)或は〓(12-43117)・◆(12-43013)に作る。〔集韻〕鞄、或从韋从陶。[五](1)用具の皮。〔廣韻〕鞄持皮。(2)かはつくり。〔集韻〕鞄、柔皮工。
[邦]かばん
出典:諸橋轍次博士著『大漢和辭典』巻十二 P157 (P12754)

▲=韋+軍(なめしがわ)、裘=かわごろも、〓=韋+包。鞄の異字体。◆=上に「陶」下に「革」


上記記述の大半は、康煕字典によっているようで、康煕字典にも同じような引用がでている。
ここで鞄とは、持ち運ぶモノのことではなくて職人のことを指すという。じゃあ、日本語で「鞄職人」と書くのはさしずめ、「かばん職人職人」ということか。。
辞典を引いてちょっと意外に思ったのは、「鞄」が「鮑」(魚へんに包む=あわび)と一緒の扱いになっているとは思わなかった。鮑は人名でよく使われているところから、音を借りて、なめしがわ職人のことを鞄ではなく鮑で代用していたようだ。ちなみに、この大漢和辞典の中で革へんの漢字を見ていると、ムチや矢を入れる筒、牛車のパーツ等が数多く見られる。残っている古典に政治モノ戦記モノとかが多いからだろうか。いずれにせよ、大漢和辭典には、鞄に関しては熟語の用例も無く、非常に素っ気無く書かれていることがわかる。