鞄のオーダーメイド体験記 ナイロンバッグ編

1998年に大枚72,000円をはたいてナイロン製の鞄をオーダーメイドしました。これはオーダーしてから完成までの記録です。

  • スケッチ作成まで
  • オーダーから入金まで
  • ひたすら待つ
  • 届く~第一印象
  • 使ってみる
  • 後日談

◆スケッチ作成まで 

1998年4月19日

このページがきっかけで、カバンに関してどのようなコダワリを持っているかといった取材を雑誌から受ける。取材場所は都内の某ホテル。一時間ほど取材を受けた後、なんとなく今、自分が持っているカバンが気になりだした。

1998年4月21日

取材のあと、カバンをしみじみ眺めていると、あちらこちらに綻びを発見。特に握り手の所なんかいつちぎれてもおかしくないほどになっていた。これはいけないと思いながら、出張のため新幹線に乗り込み、しばらくしてとうとうたまらず、新幹線の座席で、ノートに新しいカバンのイメージ・スケッチを書き出してしまった。

これがまた、なんとも楽しく、出張から帰って我が家についてからもこの意欲は衰えず、午前3時頃までスケッチのリライトをやり直していた。かれこれ20~30枚は書いたかな。スケッチしていると、だんだん普段何をどこに入れているのか、ということが明確になってくる。これは、後にオーダーメードする際に、ポケットやオーガナイザー・パネルの位置などを決めるときに役立った。また、複数のカバンのスケッチを書いているうちに、あっちの良いところをこっちに持ってきて、等と欲張りな考えがでてきた。(こうしている期間がある意味一番幸せなのかも)

スケッチといっても、絵心の無い私のは、単なる線画。米国のサイトのいくつかは、写真ではなく線画を掲載して商品販売をしていたりするので、これを参考にした。

◆オーダーするときに送ったスケッチ

字が汚くて恥ずかしいので鮮明には載せていませんが、雰囲気はわかるとおもいます。使っている紙は、当時仕事で使用していたシステム設計書を書くための紙です。

◆オーダーから入金まで

1998年4月22日

最初の頃からリンクしている某カスタムメイドショップにE-MAILを打ち、今のカバンの応急修理が可能なのかどうか、革以外の素材での制作もできるのかどうかを質問した。

1998年4月23日

返事があって、いずれも可能とのこと。早速、ラフスケッチを清書し、スケッチ画7枚をFAXする。清書のポイントは、全体図と、各パーツの詳細を書くことだった。前面全体図、背面全体図、前面オーガナイザーパネル図、背面パネル図、ショルダーストラップ、中敷き、寸法図等を用意した。それぞれに要望や用途等を書き込んでおく。前面全体図には、もちろん素材、用途等も書いてある。

どうしたい、という要望が出しにくいのならば、今のカバンの何がどういやなのかをはっきり書いておくべきかも。そうすれば作るほうも、解決の指針を見出しやすいというもの。私の場合、市販のショルダーストラップは身長にくらべて長すぎるので、肩パッドの位置が使いづらかったりした。

1998年4月24日

制作には入金から約45日。料金は7万2千円との見積もりをもらう。10万円は覚悟していたので、多少ラッキー。早速注文しますとの電話を入れて、FAXを入れた図で大体はわかっていただけたようである。でも、まだまだ詰めないといけないこともいろいろありそうだ。はたしてどうなることやら。

1998年4月26日

今の修理が必要なカバンを送る。

1998年4月28日

家に帰ると、驚いたことに、修理が必要なカバンが、送り返されてきている。あれ?と思ったら、しっかりと修理されてあった。ものすごく速い! 思ったよりも丁寧な修理で、工賃たったの2000円也。(送料でこっちも1000円、あちらも1000円かかっているけど)

1998年4月30日

そろそろ材料見本が届いてもいい頃なのだが、まだ届かない。とりあえずフライングだけど、送金してしまう。郵便振替で、代金72000円+修理代2000円+振替手数料120円。郵便局に支払いに行ったのはいいけど、ゴールデンウィーク+月末ということもあって、局内は大混雑。その他、雑用を済まして家に帰ってくると、オーダー先から封筒が到着。中を開けてみると、素材のはしきれと、私が描いたラフスケッチをコピーして、多少加筆したものが入っていた。この中のいくつかのQ&Aに早速E-MAILで答えておく。

しかし、素材見本だけではやっぱり雰囲気をつかむのは難しい。もちろん、材質や手触り、光沢、布地の織りといったものは非常によくわかるのであるに超したことはないのだけど。私の場合、表面が合成繊維の織、裏面がビニル(?)張りになった薄手の素材が送られてきて、本当にコレで10キロくらいの重量に耐えることができるの?と、多少不安になった。だけど、家にある他のカバンの似たような布地を調べてみると、確かにその程度の薄さで十分らしい。教訓:素材見本が送られてきたら、カバン屋さんで似たような素材でできたカバンを確認してみよう。

◆ひたすら待つ

1998年5月2日

ネームプレートについてのやりとりを行う。カバンにこの会社のロゴを入れたプレートをつけるのだが、そこに、私の名前を入れることができるのだという。字体やフォントサイズ(!)を変えることができないのはちょっと残念だが、他人にオリジナルを証明する唯一の証拠だし、入れてもらうことにする。フルネームを入れるのは、盗難とか犯罪の時に心配なので、H.Ohtagakiにしてもらう。取り替え可能ならE-MAILアドレスを入れてもらうことも考えたのだが、いつメールアドレスが変わるかもわからないし、無難なところに落ち着いた。

1998年5月19日

しばらく、音沙汰が無いのでちょっと不安になって、「入金確認していますか?」とメールを打ったところ、大丈夫です、との返事。5月2日のやりとりで、受け取り確認を報告したつもりになっていたらしい。作っている側が忙しくしているときには、こちらはひたすら待ちの状態。こちらの意図は届いているのだろうか、実は放置されているのではないか等、やっぱりネットを通じて製造過程を時々見せてもらったら安心度はかなり違うと思う。(とはいっても、素人が縫製前のバラバラの部品を見たって何が言えるというものでもないのだが)

1998年5月25日

博識の友人いわく、数万円程度の普通のカバンの場合、制作にかかる時間は1週間も無いそうだ。たいていはバックログ(積み残しの仕事)を順番にやっつけてゆくから2ヶ月とか、時間がかかるらしい。(あるいは特殊な部品や素材の調達など)….となると、デジカメで制作課程を見せてもらうよりも、いついつから取り掛かるからねっと言ってくれたほうがありがたいのかもしれない。

1998年6月20日

そろそろ届いてもいい頃なので、いつ頃発送予定なのかをメールで尋ねる。ところが、返ってきた返事は、「一ヶ月遅れる」というもの。遅れるとわかった時点で教えて欲しいものだ。まぁ、待つしかないワネ。

◆届く~第一印象

1998年7月3日

出張先でメールをチェックすると、今日発送したとの内容と共に、できあがったカバンのデジカメ画像が貼付されていた。ううむ、帰るのは数日後。はやく仕事、終わらないかな。

1998年7月6日

夜遅く、ようやく出張から戻り、現物とご対面。第一印象は、「こんなに立派になってしまったの?」というもの。サンプルで届いたペラペラのクロスからは想像できない質感、厚み….。深夜に一人でニタニタわらってしまった。サイズ、仕切り等、たしかに注文通りだった。だけど、イメージしていたのはもっと安物っぽい出来上がり。こんなに「いい感じ」なるとは思っても見なかった。

10キロ程度の重量に耐えること、PCを入れること等を書いていたので、丈夫な作りになっていたし、表地と裏地との間にウレタンかなにかのクッション材が薄いけれども入っている。

ただ、オーガナイザーパネルは、あまり考えずにオーダーしてしまったので、ちょっと反省点有り。PCの通信ケーブルあまりにも細長いポケットを作りすぎて、逆に使いにくくなったり(手が底まで届きにくかった)した。

次の出張は目前。実際に物を詰めてみて、使ってみてこそこのオーダーが失敗だったかどうかがわかる。

下手な写真で申し訳ありませんが、各20-60KB程度のJPGファイルです。

 

こちらはもうすこし重たい各150KB~200KB程度のJPGファイルです。

 

◆使ってみる

1998年7月14日

約5日間の出張に持ち歩いて帰ってきた。3日分の下着類、日曜日用の衣類上下、ワイシャツ、PC、打ち合わせ用のノート、資料、文庫本2冊等を入れての出張。

ショルダーストラップ

チェックポイントの一つは、ショルダーストラップの具合。これは文句無く合格。想像以上の出来だった。肩パッドは大きく、ソフトなものに、という注文だったのだけど、長さ30センチもある大きなパッドを作ってくれていた。表面はカバンと同じ素材、裏面はグリップ感のある素材(ラバーじゃないんだけど…うまく表現できない)。この大きさとグリップ感のおかげで肩に食い込まない。背広姿でカバンを肩にかけると背広がくしゃくしゃになって格好悪くなってしまうものだけど、これで少しはマシかもしれない。

フットレスト

2つ目は、新幹線のシートに座ったときに、ちょうど良いフットレストになるかどうか。という変なチェック。カバンを座席に置き、中からジュース、文庫本等を取り出し、靴を脱いでカバンをそのままフットレストにしてしまう。実は、カバンの横幅は、新幹線の座席の横幅を多少意識しているノダ。肝心のフットレストに関しては、ショルダーストラップのクッション感も手伝って合格点。

文庫本の入る浅めのポケット

そうそう、横面に、ポケットがあるのだけど、この深さについては、まったく指示していなかった。出来上がりではこれがたまたま丁度、文庫本を寝かせて入れるサイズになっていて、これが以外にも具合が良かった。カバンの幅から2冊分が入るのだけど、取り出しやすく、収納しやすくなっていた。

マチ幅を可変にする

3つ目は、カバンのマチ幅を変えることができる点。これがなぜ重要かというと、移動時には着替えなどを入れる分、大きくならざるを得ないものの、一旦ホテルに着いてしまうと、これらをホテルに置いてくるので、急にボリュームがしぼんでしまう。PCは、あまりガラガラのカバンに入れると中で移動してしまって危険なので、その場合はスリムにする必要があるわけである。市販のPCカバンは、十文字のストラップを中に付けたり、動かないように固定する間仕切りなんかで対応しているものが多いが、はっきりいってこういうのは面倒くさい。で、私なりの解決策は、マチ幅を可変にするというもの。普段は横幅12センチ。広げると18センチという仕様にしてある。仕様通りにしてくれているほか、ファスナーが見えないように上手に隠してくれている。ただ、そのためかどうかはわからないが、ファスナーが多少固い。

◆後日談

1998年7月27日

マチ幅を可変にするためのファスナーがかたい、という話をホームページに掲載したところ、「ファスナーが露出しているこのタイプの鞄は、必ず底の角のファスナーが擦り切れてしまうのです。何度も他社のファスナーを修理いたしました。バラバラにしないと交換できない場所なので2万円位の工賃になってしまいます。」という返事をもらった。これはプロじゃないとわからないノウハウ。ナルホドと納得。

◆さらに後日談

1999年2月1日

約半年使ってきて、ふと細部を良く見ると、ショルダーストラップを本体に付ける留め金が、本体側の三角の金具にあたって擦り切れて、あと半年もつかどうか、というところまで来ていた。これは、どう考えても三角の金具の選択ミス、ということで製造元に連絡をしたら、ただちに取り替えてもらえた。三角の金具でも相応の耐久力があるようなのだが、私のようなヘビーな使い方の場合、やはりヘタるのが普通より早いみたいである。新しい金具は半月型のもので肉厚である。三角のものに比べ、金具と金具が擦り合う場所が広いため、磨耗する場所も分散する。

2007年9月

2004年頃からは、仕事の内容が変わってきたこともあり、鞄に入れる中身や、鞄の使い方も変わってきたため、第一線からは退きましたが、今でも時々使っている。10年近く時々修理してくれるだけでしっかりと働いてくれるナイロン鞄は、結局は安い買い物だったと言えそうだ。

◆オーダー先

今回のオーダー先は、スタジオマルノという千葉県大網白里町の小さな工房で、検索エンジンなどには、malnoというブランド名で登録してある。インターネットで調べないと絶対に行きつけなかった工房だろう。メールや郵便でのやり取りだけなので、まだ一度もお会いしていないのが残念である。